地方でお店を開業する場合、都心で開業する場合とは異なる点が、いくつか考えられる。例えば、人口。都心に比べると少なく、それは来客数に影響するはずだ。あるいは、アクセス手段。電車よりも、車移動が主流であることが多い。また、それぞれの地域性も、経営に影響してくるのではないだろうか。
こうしたさまざまな要素を踏まえ、地方で小さなお店を開業するとき、どんな準備や心構えが必要になるのかを考えてみる。
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【1】立地選びに注意する
地方は都心に比べて賃料が安い。広々とした土地で経営できる可能性がある一方、立地によってはアクセスが悪く集客しにくい、そもそも人口が少ない(=お客様の絶対数が少ない)などの注意点も考えられる。また、飲食店などでお酒の提供を行う場合は、車移動を想定した立地が不利になりやすい。こうしたことから、立地をしっかりと検討することが重要になる。
検討したい具体的なポイントとしては、例えば、下記が挙げられる。
地域性
その土地ならではの地域性は、良くも悪くもお店の在り方に左右する。地域住民の価値観や自治体のルール、助成金や補助金の有無、移住しての開業であれば、移住者への支援がどれくらい行われているかなど、事前に調べておく必要がある。
また、特産品があれば、お店のコンセプトや商品・サービスに取り入れてみるという選択肢もある。事前に地域性を調べることは、店舗経営の新たな可能性を探ることにもつながる。
交通状況
交通状況は、来店数にダイレクトに影響する。人通りはどれくらいか? 公共交通機関はあるか? ない場合、車で来やすい場所か? あるいは、観光客など外からのお客様が来やすいか? お酒を提供する場合は、運転代行サービスやタクシー利用がしやすい場所かどうかも、気になるところである。
駐車場の有無
車での来客を想定している場合は、駐車場の有無も集客の重要なポイントになる。どれくらい駐車場が確保できそうか、できない場合は近隣にパーキングエリアがあるかどうかなどを確認しておきたい。
その立地で経営する意味
なぜその立地で経営したいと思うのか? 不便さや少ない客数などのデメリットがあってもその場所がいいと思う場合は特に、改めてその理由を洗い出す必要がある。その場所がコンセプトやビジョン、希望の働き方や暮らし方に合っているか、デメリットをカバーできるような工夫(集客の手法など)ができそうかなどを見直すことが重要になるだろう。
【2】地域との連携を考えてみる
地方でお店を経営する魅力の一つに、地域性をビジネスに取り入れられる、という点がある。その土地ならではの特産品を活用できるか? 地域住民や地元企業、自治体と協力し合うことができるか? など、地域との連携を考えてみると、面白いアイデアに辿りつくかもしれない。例えば、以下のような方法が考えられる。
地域のストーリーを取り入れる
歴史や文化、慣習、そこで暮らす人々が大切にしているもの――その地域ならではのストーリーは、そこでお店を営むときの大きなキーワードになる。地元の人々に聞いてみたり、資料館を訪ねてみたり、文献を読んでみたり……場所が持つストーリーを学び、経営に活かしてみるのはどうだろう。
特産品の活用
わかりやすいところで言えば、食べ物。飲食店で食材として使うのはもちろん、小売りやサービス提供のお店であれば、ロゴや店舗デザインのモチーフに活かす手もある。地元農家との連携を図るのもいいだろう。
あるいは木材などの素材は、お店の建材や小物に使う手段も考えられる。工芸品であれば、商品として取り扱う、ディスプレイに活用することも検討できるだろう。ただし、使用許可が必要なものには、注意が必要である。
地域の課題解決、地域貢献
その場所に今までなかったサービスや商品を提供する、地域活性化の一手を担うなど、お店は地域の課題解決や地域貢献の一手にもなり得る。地域のお困りごとが、お店の開業によって解決することもあるかもしれない。自分のやりたいことと、その地域を繋ぎ合わせて考えてみてはどうだろう。
地元の企業や自治体、団体と連携して、地域貢献を実践するという手もある。具体的には、地域のイベントへの出店や協賛、商品やサービス、メニューでのコラボが考えられるだろう。まずは、既に開催されているイベントに顔を出すことで、つながりを丁寧に作っていきたい。
ただし、これらを実施する場合は、そもそものニーズや課題をしっかりと調査することが重要になる。闇雲に飛び込んでいくことは、地域との亀裂を生むことにも繋がりかねない。その地域独自の慣習やコミュニティを無視せず、どんな形が求められているのかを慎重に検討したい。
お店を構えるということは、その場所と生きていくということでもある。その場所に関心を持ち、学び、そこで暮らす人たちと繋がっていくようなイメージを持ってみるのはどうだろうか。長く、心地よく、健やかに経営していくための、重要なピースになるはずだ。
【3】集客の戦略を練る
都市部は人通りが多く、黙っていてもある程度の集客を見込めることがある。しかし地方ではそうはいかない。お客様の絶対数が少ないからこそ、しっかりと集客の戦略を練ることが必要になる。
【4】複数の売上の柱を立てる
お客様の絶対数が少ないのであれば、来客以外の売上の柱を立てることも検討しておきたい。わかりやすいところで言えば、オンラインショップの開設が考えられる。
オンラインで販売できるものを取り扱う場合に限るが、全国の人々をお客様にできるため、売上の大きな柱になり得る。
飲食店であれば、イートインのほかに、テイクアウトやデリバリーの導入が考えられるだろう。地方では、家族や親せき、友人たちの集まりなどで、テイクアウトやデリバリーを利用することも多い。こうした需要に応えるパーティーメニューのほか、車利用でふらっと購入できるドリンクメニューなども良いのではないだろうか。
【5】人材の確保・育成に力を入れる
人口が少ないということは、それだけ人材確保も難しいということになる。特に、即戦力の 経験者を見つけることが大変かもしれない。とすれば、採用はもちろん、育成に関しても気を配りたい。
まず採用に関しては、年齢や属性を絞らず、広く募集をかけるという手がある。お店にとって重要なのは、お店を大切にし、共に戦ってくれる仲間である。思いもよらなかった層が、心強い味方になってくれることもあるのではないだろうか。面接時にはお店のビジョンやコンセプトを共有し、どんなふうに働いてもらいたいかや熱意を伝え、共感してくれる人を探すのはどうだろう。こちらからも、働きやすい環境を整備し、提供する必要がある。
育成に関しては、挨拶や声掛けの仕方など、基礎から丁寧に伝えることが大切になる。口頭で伝えるのはもちろんのこと、マニュアルを用意して、困ったときには振り返ることができるように配慮する。従業員だけでなく、経営者自身が振り返ったり、改善したりするときにも役立つ。また、面接時同様、ビジョンやコンセプトをしっかり共有することも欠かせない。
働いてくれる人は、その地域に暮らす人々であることが多い。従業員と良好な関係を築くことは、地元のお店として根づいていくことにも繋がる。育成だけでなく、コミュニケーションをとる、チームビルディングに努めることにも、気を配りたい。
【6】商品やメニューを幅広く揃える
ニッチな商品やメニューだけを揃えてしまうと、お客様の絶対数が少ない分、さらにお客様が少なくなってしまう。お店のコンセプトを押さえつつ、商品やメニューにはある程度の幅を持たせておきたい。
例えば飲食店であれば、キッズメニューや年配層向けのヘルシーメニュー、アパレルであれば子供服など幅広いサイズの展開、雑貨店であればファミリー層に好まれる商品といったようなことが考えられる。
もちろん「何でも屋」になる必要はない。ただ「自分たちのビジョンやコンセプトなら、ほかにどんなことができるか?」を考えてみると、意外なビジネスの可能性を見いだせるのではないだろうか。そこに挑戦することがある意味、地方経営の面白さかもしれない。
【7】「わざわざ行きたい」と思わせる魅力を用意する
不利な立地で経営する場合、「遠くてもわざわざ行きたい」と思わせる工夫をする、という戦略も考えられる。
ここでしか得られない体験、ここでしか買えないもの、ここでしか味わえない料理……「わざわざ行きたい」と思ってもらえるような魅力をアピールできれば、地域住民はもちろんのこと、観光客にも注目してもらえる可能性がある。
地産地消のグルメを提供したり、地域の特色を活かしたワークショップやイベントを主催してみるのはどうだろう。実施するだけでなく、SNSなどで宣伝やその後のレポートを発信することも大切になる。
地方でお店を開業する場合、その価格の安さや移住先のゆったりした暮らしぶりなど、魅力に感じる部分も多い。しかし、売上を確保するのが難しい場合なども考えられるため、丁寧に戦略を立てることが欠かせない。お店のコンセプトやビジョンに照らし合わせながら、自店に合った戦略を取り入れ、健やかに経営していく術を身につけたい。
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