お店のマニュアル、何を、どんな形で用意すべきか? 種類や作成のコツを考えてみる

店舗運営は、開店から閉店まで実に多くの業務が発生する。それらをできるだけスムーズに行うには、業務の流れがすぐわかるマニュアルの存在が重要になる。しっかりとしたマニュアルがあれば、業務を効率化できるほか、作業の抜けを防げるだろう。では具体的に、どんなマニュアルを、どう作成すればよいのか? 用意しておきたいマニュアルの種類や作成のコツを考えてみる。

お店のマニュアル、どんなものが必要か?

店舗経営においてマニュアルを作った方が良いものは、例えば手順が多く忘れる可能性が高いもの、あるいは複雑な手順やノウハウを含み、人によって業務に差が出るものなどが挙げられる。例えば、下記である。

【1】開店準備マニュアル

開店準備は特に作業が多いほか、開店時間に間に合わせる必要があるため、マニュアルがあると業務がスムーズに進行するだろう。項目としては、以下が考えられる。

・開店前の清掃
・調理の仕込み
・客席や商品ディスプレイのセッティング
・商品や食材の確認
・身だしなみ
・手洗いと手指消毒
・開店前のミーティング
・店内、店外の最終チェック

客席や商品ディスプレイなどは、お手本となる写真を用意しておきたい。また、手洗いや手指消毒は開店準備以外にも使うため、別途マニュアルを作成し、厨房など各所に置くという手もあるだろう。こちらも文章はもちろん、手順ごとの写真か、動画があるとわかりやすい。

【2】接客マニュアル

接客は臨機応変な対応が求められるほか、人によって差が出やすい業務だ。ゆえに、店側が接客の基盤をしっかりと作ることで、スタッフの不安を減らせるだろう。内容としては、例えば、以下の項目が挙げられる。

・接客中の声掛けや話し方
・初回のお客様に説明すべき内容
・注文の取り方
・会計について
・電話対応
・予約受付
・クレーム対応

接客中の声掛けや話し方は、具体的な事例やお手本を用意したい。手順に加えて、やりとりの流れをセリフで記載する、「この場合は、こう対処する」といった対策集を用意するなど、わかりやすさを追求する。加えて、マニュアルに沿ったロールプレイングや研修を実践すれば、接客の質を調整できる。

クレーム対応に関しては別途マニュアルを作るという手もある。こちらも状況別の対応や事例集があると、いざというときに安心だろう。

【3】清掃マニュアル

実店舗にとって清掃は、お客様の印象を左右するため、かなり重要なポイントといえる。開店準備、閉店後のほか、アイドルタイムやちょっとした空き時間など、時間別や状況、場所別にやることを考えてみたい。項目は以下が挙げられるだろう。

・お店の外回り(ファサードや駐車場)
・入口
・客席
・窓、床、照明
・看板
・厨房(水回りや床、冷蔵庫内など)
・トイレ

一言に清掃と言っても、モップ掛けや布巾で拭く作業、ごみ捨てなど、さまざまな作業がある。いつ、どの道具を使って、誰が、どう清掃するか? いつでも同じクオリティを保てるよう、具体的に必要な備品ややり方、担当者を細かくマニュアルに記したい。掃除の備品は、ストックの補充についても考える必要があるだろう。

【4】閉店作業マニュアル

閉店作業は開店作業と同じものもあるが、レジ閉めや売上集計など、閉店後ならではの作業も発生するだろう。例えば、以下が挙げられる。

・看板をしまう、外の照明を消す
・客席の片付け
・厨房の片付け
・レジ閉め
・日報作成
・閉店後のミーティング
・備品の補充

スタッフの退勤時間を考えると、閉店後の時間は限られている。できるだけスムーズに作業を行えるよう、効率化を目指したい。

【5】災害時の対応マニュアル

地震や火事、近年であれば新型コロナなど、災害の時にどう対応するかがわかっていると、いざというときに安心だ。

・緊急時の連絡方法
・緊急避難場所や非常食のストックについて
・お客様にどんなアナウンスを行うか

緊急時に素早く、てきぱきと動くことはなかなか難しい。時間のあるタイミングで、必要なものが揃っているかを確認したり、避難などのシミュレーションをしておきたい。

【6】トラブル対応マニュアル

先述のクレーム問題や金銭的な問題など、予測できるトラブルに関してはマニュアルを作っておく。具体的な状況やその対策の事例集をまとめておくと便利だ。これに関しては、普段の営業中に実際に起こったことはもちろん、書籍やWebなどで、トラブル事例を調べておくという手もある。

【7】お店独自のマニュアル

そのほか、お店独自のマニュアルも考えられる。飲食店であれば、厨房の手入れや調理マニュアル、アパレルや雑貨店であれば、在庫管理や品出しなどのマニュアルも考えらえれるだろう。

あるいは『お客が殺到する飲食店の始め方と運営 ’25~’26年版』(入江直之)では、「『うっかりミスが多い作業』や『たまにしかやらないので、ついやり方 を忘れてしまう作業』、そして『数値 の間違いが多い作業』」などをマニュアル化すべきと提案している。

たとえば、開店時や閉店時に電気器具のスイッチの入れ忘れ、切り忘れが多ければ、その場所の写真を撮 りましょう。そして、どのスイッチを、どの順番で入れれば(切れば)よい のかを書き込んでおきます。
あるいは、調理や仕込みの手順にミスが多いなら、その手順を写真に撮り、番号を振って分量や時間などを書き込みます。(p.186『お客が殺到する飲食店の始め方と運営 ’25~’26年版』入江直之)

マニュアル作成のコツ

続いて、マニュアル作成にあたって、どんなことを実践すればうまく行くのかを考えてみる。

【1】業務の洗い出し、整理を行う

まずはふだんの業務を一通り洗い出し、書き出してみる。そこから、マニュアルが必要そうなものをピックアップする。このとき気をつけたいのは、経営者自身の考えだけで判断しないことだ。スタッフに意見を聞いてみると、意外といるもの・いらないものがわかってくるだろう。

【2】ビジュアルを活用する

マニュアルは文章だけではわかりづらい。イラストや写真、動画など、ビジュアルを活用することで、理解が深まる。例えば、下記のような対策が考えられる。

・PCやスマホでの作業はスクリーンショットを掲載する
・手洗いの流れを動画で解説する
・身だしなみのOK例を写真で表す
・客席のレイアウトを写真に撮り、それ通りに配置する
・複雑な工程はフローチャートでわかりやすくする

そのほか、見出しをつける、マニュアルの大事な部分には「重要」などのアイコンをつける、赤字などの目立つ色にするといった工夫も考えられる。

ただし、詰め込みすぎると余計にわかりにくくなってしまう。一目で理解できるよう、ある程度の余白を作り、余裕のあるレイアウトにしておきたい。

マニュアルを作成する際は、Microsoftのワードエクセル、Googleのドキュメントスプレッドシートなど、さまざまなサービスの活用が考えられる。クラウド保存できるタイプであれば、保存や更新、共有が簡単になるだろう。特に何を使いたいかが決まっていない場合は、マニュアル向けのサービスを調べて、気になるものを実際に使って判断したい。使い勝手や必要な用途は、お店によって異なるからだ。

【2】誰にでもわかるようにする

マニュアルは、普段から働いている経営者やスタッフはもちろん、これから入ってくる新人スタッフにも使ってもらうことになる。ゆえに、初見でもわかりやすいものにしておきたい。具体的には、下記の対策が挙げられる。

・専門用語をできるだけ使わない(使う際は注釈を入れる)
・できるだけ簡単な言葉で、簡潔に書く
・言わなくてもわかるなどの理由で手順を省略しない
・具体的な数字を記す(しっかり手を洗う ⇒ 3分間手をこすり合わせて洗うなど)
・すべてのマニュアルで用語や文体を統一する
・マニュアルの通りに業務を行い、問題ないかどうかを複数人で確認する
・新人スタッフ、難しければ第三者に読んでもらい、わかりにくい点を指摘してもらう

実際にわかりづらかったり、使いにくかったりすれば、マニュアルを使わずに「何となく」で業務を行ってしまうことにも繋がる。自分だけでなく、皆が、特にこれから入ってくるであろう業務を知らない人にも、“わかる”マニュアルを目指したい。

【3】ノウハウや事例も併せて掲載する

手順以外にも、業務のポイントとなるノウハウなども、併せて掲載するとわかりやすい。例えば、接客やトラブルにまつわるマニュアルは、手順だけではわかりにくいケースも多い。その場合は「こんなことが起きた場合はこうする」「以前こんなことがあり、こう対処した」といったノウハウや事例を併せて掲載しておくなどが考えられる。ほかにも、下記のようなポイントの追記も検討したい。

・「ワンポイント」のコツ
・その手順をやる目的
・より効率化できるやり方
・過去のイレギュラーな事例とその対処法
・ありがちな問題のFAQ

発生しやすい問題はもちろん、あまりない事例でも有効な対処法がある場合はまとめておくと便利だ。これは経営者自身の経験はもちろん、従業員にヒアリングを行いながら、想定される問題とその対策を作成する。リアルなお困りごとに答えてくれるマニュアルは、強い味方になってくれる。

ただし、何でもかんでもマニュアルに付け足すと見にくくなってしまう恐れもある。事例などが多くなってしまう場合は、手順とは別に「事例集」や「FAQ集」を作るという手もある。

【4】すぐに手に取れる位置に配置する

出来上がったマニュアルは、必要な時にすぐ見えるよう、その配置にも気をつけたい。紙であれば、ポスターにしてバックヤードや厨房に貼り付ける、ファイリングしてレジまわりに置くなどが考えられる。ホワイトボードなどにチェックリストを作成するという手もあるだろう。デジタルのマニュアルであれば、社内wikiや共有フォルダなどの誰でも見られる場所を用意する。

【5】定期的に見直し、改善していく

業務を進めていくうちに、何となくやりにくい点が見つかったり、より良いやり方が見つかることもあるだろう。ゆえに定期的に見直し、改善していきたい。マニュアルは業務効率の重要なカギを握っているため、常に最新にアップデートしておくことが望ましい。半年に一回、年に一回など、見直しのタイミングを決めておく。

さらに改善した情報は必ず、スタッフ全員に周知しておきたい。マニュアルの変更日やバージョンの数字を明記し、ミーティングなどで共有する。

マニュアルは作業を明確にし、業務に取り組みやすくしてくれるほか、情報を共有することで属人化を防げる、チーム全体の生産性が上がるなどのメリットも多くある。作業の多い業務や人によって差が出る業務は特に、マニュアルを味方につけたい。

参考文献
『失敗しない! 飲食店の始め方と経営』久連松秀明監修

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店舗経営者の家系に生まれ育つ → 店舗取材を行う編集者・ライター。小さなお店をこよなく愛しています。何かと変化の多い時代の中で、少しでも健やかに、自分たちらしくお店を営むにはどうすれば良いのか? 店舗経営について日々研究し、記録しています。