お店をスムーズに回していくには、チームの連携が欠かせない。その連携の重要なカギを握るのが、情報共有である。業務に必要な連絡はもちろん、スタッフそれぞれの勤務状況、新しい商品やサービスの知識、お客様の情報、トラブルやクレームの発生と行った対策……一人の情報をみんなで把握できれば、業務改善や生産性向上、顧客満足度向上に役立てられる。
ではその情報共有は、どんなふうに行えばよいのだろうか? ふだんから考えておきたいこと、実践したいことを書き出してみる。
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【1】情報共有の下地を作る
まずは、チーム全員が「情報とは何か」、そして「なぜ共有すべきなのか」を理解することが重要になる。店舗経営において重要な情報とは、先に述べたようなお客様や商品、勤務に関するものが中心となるだろう。具体的には、下記が挙げられる。
・業務連絡(タスクやスケジュール、商品の入れ替え情報、予約状況など)
・ノウハウ(業務に役立つ知識や情報)
・お客様の情報(リピーターかどうか、記念日や趣味嗜好、お店に対する要望など)
・スタッフの勤務状況(シフトの状況、各人の希望の働き方など)
・商品やサービスの知識(新商品や人気商品に関する情報、業界の時事ネタなど)
・トラブルの有無とその対策(どんなクレームやトラブルがあったか、どう対処したか)
・経営課題(来店数が少ない日や売れていない商品、経営の困りごと・悩みなど)
新商品の情報などは「これが新しい情報です」と提示できるが、お客様のちょっとした情報や小さなトラブルなどは、日頃の何気ないやりとりからわかることが多い。お客様との何気ない会話や業務中にふと疑問に思ったこと、些細なことかもしれないが、これらもまた、意外な情報源となる。ゆえに、これらもしっかりと「情報である」とみんなが理解しておきたい。
では、なぜ共有すべきなのか。それは、これらの情報がすべて利益、そしてスタッフ全員の働きやすさに繋がるからだ。
ふだんからこうした情報の共有ができていれば、接客や業務がよりスムーズになる。スタッフ間のコミュニケーションが活性化され、トラブルも起きづらくなるだろう。そしてそれはやがて、お店全体の利益に繋がり、経営者はもちろん、スタッフ全員に還元されることになる。つまり情報共有は、そのお店で働く全員にとって、とても大切なことといえる。このことを理解することで、スムーズに情報共有するための下地ができるのではないか。
【2】定期的に情報共有できる仕組みを作る
次に、情報をどう共有するか。これは定期的に情報共有できる仕組みを作ることが望ましいと考えられる。どんな仕組みが取り入れやすいかは各店によるため、具体例をいくつか挙げてみる。
定期的なミーティングを行う
『これからの飲食店経営者・店長の教科書 売上5割減でも巻き返せる!』(田中司朗)では、月に1回の全体ミーティングを推奨している。「毎月実施していると答えた店長の店はたいてい、チームワークが良くて売上が向上しており、スタッフの定着率も高い」(p.108)という。週や月など、決まったタイミングでミーティングを行うことで、情報共有や意見交換がスムーズになるほか、「この日までに考えておこう」とスタッフ側も準備ができるだろう。
毎日のルーティンに組み込む
毎日のちょっとした時間を活用して、情報共有をするという手もある。『無印良品のPDCA 一冊の手帳で常勝経営を仕組み化する!』(松井忠三)によれば、「無印良品」では各店の店長が朝一番にパソコンを開くと「朝礼メニュー」が表示される仕組みを採用しているという。「売上概算日報」や「今日やること」など必要事項が記載されており、これを元に朝礼を行っている。
数字の管理はもちろん、営業会議で決まったことや、店への指示など必要事項が掲載されているので、情報の伝達漏れを完全に防ぐことができます。また、この画面は、店長だけでなく、パートやアルバイトも見ることができるので、現場の隅々まで情報を行き渡らせることもできるのです。
(p.155-156『無印良品のPDCA 一冊の手帳で常勝経営を仕組み化する!』松井忠三)
朝礼以外にも、閉店後の時間や、飲食店であればアイドルタイムの活用も考えられるだろう。ただし、口頭での共有を実践する場合は、その内容をメモしておく、議事録を作成するなど、記録に残すことが大切だ。聞いただけの内容は忘れてしまったり、食い違いを生むことにも繋がる。全員が必要な時に振り返れるようにしておきたい。
また、ほかの方法としては、日報に記載することが考えられる。それを全員で読む、または、経営者などの代表者が目を通して全員に共有する。
情報共有ツールを導入する
リアルタイムで情報を更新していきたい場合は、情報共有ツールを取り入れてみる。情報共有ツールとは、例えば、SlackやMicrosoft Teams、LINE WORKSなどのチャットツール、Googleドライブなどの共有フォルダ、Trelloなどのタスク管理アプリなどが挙げられる。
使用感を調べて、スタッフ全員が取り入れやすいものを選びたい。直感的に使えるか、自店のニーズに合っているか、どれくらいの費用で導入できるのか、セキュリティ面などを検討する。
情報共有ツールを使うときに大切なのは、導入した経営者本人が積極的に活用して、使用例を示すことだ。スタッフに促しても、なかなか自分から積極的に使うのは難しい。経営者は「毎日この時間は情報共有ツールを見る時間」など、自分がツールを活用する仕組み作りをしておきたい。
【3】情報共有しやすい環境を作る
さらにもう一つ重要であるのは、情報しやすい環境作りだ。いきなり「積極的に情報共有しよう」といっても、なかなか難しい。以下の点を考えたい。
チームのコミュニケーションを活性化させる
スムーズな情報共有を実践するには、普段からチームのコミュニケーションの基盤を築いておくことが欠かせない。社内イベントや食事会、気軽な意見交換のミーティングなど、コミュニケーションを活性化できるような仕組みを作るのはどうだろう。
経営者がサポートにまわる
また、経営者ばかりが発信役にならないように気を付けることも欠かせない。つい経営者自身が中心となってコミュニケーションが進んでしまうが、スタッフから意見が出ているときは聞き役にまわり、脱線したときにフォローに努めるなど、サポートの役割を徹底したい。1on1ミーティングなどで、個別の意見をしっかり聞く工夫も大切だ。
情報共有のハードルを下げる
「必要な情報をしっかり共有しなければならない」と考えると、ハードルを高く感じ、難しく感じるスタッフも多いかもしれない。ゆえに、最初のハードルはできるだけ下げておきたい。例えば、以下のような対策が考えられる。
・アイデアや意見を否定しない
・共有してくれたこと自体に感謝する
・年齢や立場などに関係なく、気軽に発言できる環境を作る
・ポジティブな内容を特に積極的に共有し、認め合う文化を醸成する
失敗や悩みなどは共有しづらいかもしれないが、経営者側が積極的に共有したり、共有してくれた人を評価するといった仕組みを作ってカバーしていきたい。
【4】しっかり話し合いたいことは、会議やプロジェクトへ
情報共有を単なる雑談で終わらせてしまうのは、非常にもったいない。もし共有した内容が、その場で解決しきれないことであれば、改めて会議の場を作って考えたい。あるいは「○○プロジェクト」などと題して、長期的に取り組む企画にしてみるのはどうだろう。
長期で取り組む場合は、目標やスケジュール、やるべきタスクなどを洗い出し、経営者を含むスタッフがどのように担当しながら進めていくかを検討したい。
【5】共有した情報を整理・保管する
情報を共有することは重要だが、それだけで情報を活かすことは難しい。整理・分類して上手に保管し、必要な時にすぐに取り出せるような仕組み作りも重要になる。
先述の情報共有ツールを使っている場合は、それが保管ツールとして重要な役割を果たしてくれるだろう。ほかにも、情報をまとめた社内wikiを作ったり、紙で保存する場合は出し入れしやすいファイルなどで分類しておきたい。
情報があちこちに散らばっていると業務効率が著しく下がるので、できるだけ一元化することも重要になる。「必要な情報は、とにかくここを見ればわかる」という場所をオンラインでもオフラインでもいいので確保したい。
業務に関することは別途、マニュアルを制作するという手もある。基本的な手順はもちろん、日々の経験を事例としてまとめ、営業中にすぐ見られる場所に置いておく。
【6】情報共有の仕組みを定期的に見直す
情報共有の仕組みは、一度作れば完成というわけにはいかない。毎日営業していくうちに、不便になってきたり、改善策を思いついたりすることもあるだろう。ゆえに、仕組み自体も、定期的に見直していきたい。例えば、以下のような点を確認してみる。
・現状のツールは使いやすいか?
・情報の検索・取り出しに時間がかかっていないか?
・似た情報がいくつも保存されていないか?
・スタッフ全員が前向きに情報共有できているか?
やりづらさを感じている点があれば、早めに改善を行う。情報共有は店舗経営の要でもあるため、経営者・従業員ともに心地よくできる環境を整えておきたい。
【7】働き方の見直し・改善
意外なところかもしれないが、質の良い情報共有を定期的に行っていくためには、スタッフ全員が余裕をもって働くことが求められる。忙しすぎる環境ではその場の業務をこなすことで精一杯になり、情報をキャッチしたり、それを共有したりする余裕がなくなってしまう。こうなると、トラブルが起きやすくなったり、職場の空気も悪くなりがちだ。
皆が情報共有をできるような、少しでも余裕のある働き方をするにはどうすればいいか? 業務効率化できるところがないかを探す、人員配置を見直すなどといった対策が求められる。
情報をスムーズに共有するための工夫は、目に見えてわかりやすく必要な業務……とは言い難い。「ほかの業務に手一杯でそんなことに手を掛けられない」と思う場合もあるだろう。しかし、必要な情報を迅速に共有し、業務を見直すことができれば、その「手一杯」の状況を改善できるかもしれない。今一度自店の現状を見つめ直すことにも繋がるはずだ。
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