せっかくお店を開業したのであれば、できるだけ長く続けたい。しかし、店舗経営の廃業率は高い。一説によれば、1年で3割、5年で半数以上、10年ともなると9割近くが閉店するとされている。
そんな状況の中で、できるだけ自分らしく、長く経営を続けていくには、どんな工夫や考え方が必要になるのだろうか? そのポイントを書き出し、探ってみる。
経営の軸を持つ
まず最初に考えたいのは、経営の軸となる考え方を持つことだろう。新しいアイデアに挑戦するとき、何らかのトラブルがあったとき、そのほか経営者自身で何かしらを判断するときやチームで話し合うとき……どんなときにも頼れる判断基準=軸を持つことができれば、悩みや困難に立ち向かいやすく、挑戦しやすくなるはずだ。
これはおそらく、お店によって、さまざまな名前や定義で設定されていることだろう。例えば、経営理念やビジョン、ミッション、コアバリュー、あるいはお店のコンセプトがそのまま経営の軸になっているケースもある。共通して言えるのは「どんなお店でありたいか」という経営者の志ではないだろうか。
一方で、この軸が曖昧である場合には、まずここから考えてみる。特にコンセプトは店舗経営の要となるため、しっかりと検討する必要がある。コンセプトがきちんと決まっていれば、提供する商品やサービスの取捨選択はもちろん、接客や店構えにも一本筋が通り、経営に良い影響をもたらすだろう。
長く経営していく上で、お店の支えとなる考え方や基準は大きな糧になり得る。「自分はこのためにお店を経営している」と思える何かを考える、持ち続けることが大切になる。
ちなみに経営の軸は、ハウスルールにまとめたり、バックオフィスにポスターとして貼っておくなどしていつでも確認できるようにしておくと、いつでも立ち返ることができるだろう。
基本を積み重ねる
長く続ける秘訣となると、何か特別なことをしなければならないように思いがちだ。しかし、まずは何より、経営・営業の基本を押さえることが大切になるのではないだろうか。例えば、下記のような点が挙げられる。
・クレンリネスの徹底
・お客様を不安・不快にさせない接客
・チームの円滑なコミュニケーション、オペレーション
・在庫や書類などの整理整頓
・日々、月々、年度単位の売上管理
お店を清掃する、お客様一人一人、そして従業員に誠実に接する、売上や在庫をきちんと把握・管理する……どれも当たり前のことに思うかもしれないが、それこそがトラブルや損失を減らし、経営や普段の営業を健やかにすることに繋がる。お客様があっと驚くような演出や感動するおもてなし以前に(それも大切ではあるが)、そもそも、お客様を不安や不快にさせない基盤づくりが欠かせない。
さらに言えば、これらができていれば、業務効率化や従業員のストレス軽減、ひいてはエンゲージメントの向上にも繋がり、生産性向上、売上向上や維持に良い影響をもたらすだろう。
『「居抜き開業」の成功法則―150万円から繁盛飲食店をつくる!』(土屋光正)では、「繁盛店づくりにウルトラC はない」とし、小さな積み重ねの重要性を指摘している。
本当は、「どうしてあの店が繁盛しているかわからない」という店のほうが強いの です。
そういう店は、ちょっと見たぐらいでは気がつかないほど小さなプラスのこと、 ちょっとした心遣いを長い間をかけて、いくつも積み重ねています。それが長い時間の経過をへて、何もやらなかった店とは大きな差になって表われてくるのです。
他店が表面上だけ真似しようとしても、すぐには真似できない繁盛の極意が時間を掛けてでき上がっているのです。(p.185)
定期的に新規のお客様への集客を実践する
お店の基盤づくりに加えて重要といえるのが、定期的な集客だろう。何と言っても、お客様に定期的に来店してもらわなければ、営業は始まらない。施策としては例えば、以下のような取り組みが考えられる。
・SNSやホームページ、Googleビジネスアカウントなどで情報発信する
・イベントやワークショップを開催する
・チラシを配布する
先述のようにこれらは「定期的」に行う必要がある。お客様は一度集客すればいつでも来てくれる、というわけではないからだ。一度しか来店されないお客様もいれば、何度か来てくださった後に来なくなるケースもある。これはお店側に原因がある場合もあれば、お客様のライフスタイルの変化など、全く関係のないこともある。
ゆえに、お店側の原因を無くすため、次でまとめているリピーター、ファンづくりももちろん欠かせないが、それでもお客様は常に入れ替わっていくと心得て、新規のお客様に来ていただく努力を大切にしたい。
リピーター、ファンを増やす工夫をする
新規のお客様に加え、リピーター、そしてファンのお客様を増やすことも大切にしたい。常連のお客様に信頼され、愛されるお店は長く続く傾向がある。
まずは一度来てくれたお客様に、少しでも満足してもらえるよう努める。その後、次回来店に繋がるフックを仕掛け、何度も来てもらう工夫を重ねていく。なお、再来店してもらうポイントやリピーターを増やす工夫については、下記にまとめている。
売上アップの工夫
毎日、毎月の売上を確実に作ることが、お店の経営維持に繋がる。先述の集客やリピーター獲得の施策に加え、販促に注力する、飲食店であればテイクアウトやデリバリーなどのように、売上の柱を増やすなどが考えられる。
なお、お店の売上アップのアイデアやポイントについては、下記にまとめている。
商品やサービスの定期的な見直し、改善、開発
どんなにこだわり抜いた商品やサービスであっても、いざ提供してみると、なかなかお客様に購入・利用してもらえないこともあるだろう。さらに言えば、たとえ商品やサービスがヒットしたとしても、それがいつまでも続くとは限らない。そこで、定期的に売れ行きなどを鑑みながら、既存の商品・サービスの見直し・改善、そして開発を行っていく必要がある。
『目標まず5年!「長続きするカフェ」のはじめ方』(富田佐奈栄)では、自分好みのお店を作りたくて始めたとしても「原価、資金繰り、経営改善などのビジネス感覚も必要」とし、時にはシビアに判断する必要性を指摘している。
好きな気持ちと経営の両立が長続きには必須。自分の夢やコンセプトを守りつつ、納得する形で柔軟に対応することが継続のポイントです。(p.129)
とはいえ、経営者自身のこだわりを大切にすることは、店舗経営においてかなり重要なポイントでもある。このこだわりとビジネスをどう掛け合わせ、両立していくかを常に考えていきたい。
リスクマネジメントを行う
特に小さなお店の場合は、ちょっとしたトラブルにも足元をすくわれやすい。例えば、スタッフの体調不良、事故や災害、予期せぬ売上の低迷など、経営を妨げる要因がさまざまにあるだろう。そこで、下記のようなリスクマネジメントを行っておきたい。
・十分な運転資金を用意する
・ケガや病気、災害に備えた保険に加入する
・困ったときに手伝ってくれる人を見つけておく
・防犯の強化
・クレーム予防、カスハラ対応マニュアルの準備
そのほか、お店の業態やコンセプトなどによって、必要なリスクマネジメントは異なる。例えば、火を使う飲食店の場合は、火災の対策をしなければならないだろう。自店に起こりうるリスクを洗い出し、一つひとつ、対策を講じていきたい。
しっかり休む
小規模経営の場合は特に、スタッフのマンパワーが重要になるため、頑張りすぎてしまう傾向がある。しかし、無理をして体を壊しては、経営が続けられなくなってしまう。適度に休息を取ることが欠かせない。
とはいえ、適した休み方は人それぞれだ。例えば、週に一日以上の定休日を取る、あるいは朝だけ・昼だけなど、一日の営業時間を短くする方法もある。それ以外にも、体力づくりやメンタルケア、睡眠時間の確保、食生活の改善など、日頃の体調管理も大切になるだろう。若さで乗り切れると考える人もいるかもしれないが、若いうちの無理は徐々に蓄積し、後で悪影響を及ぼす可能性もある。
さらに言えば、しっかり休むことで新しいアイデアが浮かんだり、生産性向上の方法を思いついたりすることもある。休息はある意味、経営戦略の一つとも言えるはずだ。
学び、挑戦し続ける
時代もお客様も、経営者や従業員も、月日の流れとともにどんどん変化していく。ゆえに、その変化に気付き、成長していけるよう、日々学び、挑戦し続けることを大切にしたい。例えば、以下のようなアイデアはどうだろう?
・他店を視察する(同業態、業界はもちろん、別の業界も参考になる)
・外部研修を受ける
・資格を取る
・日頃からニュースをチェックする
・新商品やサービスの開発にチャレンジする
・イベントやワークショップの開催、他店とのコラボなど、新しいコミュニケーションに挑む
・自店のスタッフはもちろん、近隣のお店のスタッフや他業界の経営者など、年齢層や属性の違う人々と意見交換する
・生成AIなど、最新技術を学ぶ
営業が忙しく、なかなか難しいという場合もあるかもしれないが、学びの時間を確保することは、今後長く経営を続けていく上で、かなり重要である。スキマ時間を見つける、学びのための日を設けるなど、積極的に取り組みたい。
長くお店の経営を続けるための施策はさまざまにあるが、どれも結果として、一つひとつの努力の積み重ねと言える。自分たちらしくこだわりを持ち、努力し続けることができれば、誰かにとってのかけがえのないお店になっていくはずだ。まずは目の前のできることから、スモールステップを重ねていきたい。
参考文献(※リンクはAmazonの商品詳細ページ)
『「居抜き開業」の成功法則―150万円から繁盛飲食店をつくる!』土屋光正
『飲食店完全バイブル マンガで分かる 永く続く店のつくり方25』原田諦原案、日経レストラン編
『目標まず5年!「長続きするカフェ」のはじめ方』富田佐奈栄
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